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カイトとクロロが好きです。
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PC起動したのでデータ救出!!

というわけで、今のうちに更新しておきます。
正直ロストしてなくってよかった…。



以下、本文。


*******************************************


 咥えた煙草の先に火を点け、ぼんやりと暗くなってきた空を見上げてみる。
 排ガスまみれの空気に煙草の煙が混じって独特の匂いが鼻を掠めるのに、窓枠に背を預けてのけぞるように空を見上げれば、どっか遠くでカラスが鳴いたみたいだった。

「静雄ー、今日はもう上がっていいってよ」
「っす」

 今日の予定も済んだので事務所に戻ってトムさんの報告待ちをしていると、社長室から出てきたトムさんの声が聞こえた。
 手持ち無沙汰だったから煙草に手が伸びたが、案外早くトムさんが戻ってきたので半分も吸ってない。

「今日は平穏無事に回収できたなー。やっぱ月初だからか? 給料日後っつーのは、俺たちもやりやすくていいぜ」
「そッスね」

 今日は余計なものも壊さなかったので、社長もすんなり帰してくれた。
 先月は弁償費も馬鹿にならなかったから、このまま静かにに過ごしたい。いつまでも社長やトムさんに迷惑かけるわけにもいかねぇし。

「静雄。お前、飯どうする? 予定ないなら、どっか食い行くか?」
「俺は暇なんで、何でもいっすよ」

 特に予定もないし、帰った所でTVでも見ながらだらだらと過ごすだけだ。
 夕飯も自分で何か作ろうと思わないし、適当にコンビニで済ませようかと思ってたくらいだから、いっそ外食で済ませるのもありだった。

「んじゃ、久々に露西亜寿司でも行くかー。たまには魚も食わないとな」

 そう言ってぐいっと背筋を伸ばしたトムさんに続き、つらつらと露西亜寿司へ向かって歩いている時だった。

「あ…」

 ぼんやりと歩いている途中、歩道の対面側から背の高い男が歩いてきたのに思わず声が出た。
 すると視線に気づいたのか、あちらも俺を見つけたようで視線が合った。小さく会釈をすると、頷くように相手が顔を動かしたのでそのまま近づいてく。

「何だ? 知り合いか?」
「ええ、まあ」

 珍しい。とトムさんは思ったんだろう。俺の視線の先を興味深そうに見て、少し驚いたようだった。

「っす。買い物っすか?」

 近づいたところで話しかければ、少し間があってから相手が頷くのに内心ホッとした。
 日本語が聞き取りづらいとは聞いていたので、通じなかったらどうしようかと少し心配だった。
 それでも少し問いかけれてみれば、頷いたり単語でそれらしい会話ができたので、けっこう慣れてきてるのかもしれない。
 そんなことを考えつつ話をしていれば、トムさんが「おい、静雄。こちらさんは?」と紹介を促してきたので、慌てて向き直った。

「あっと、スンマセン。えーと、この人はカイトさんで、この前俺がブン投げた自販機を止めてくれた人っす」
「は? え、ああ。この前の…」
「で、カイトさん。こっちはトムさん。俺の学生時代の先輩で、上司になる恩人っす」
「センパイ?」
「あー…先輩って、英語でなんつったかな…。まあ、世話になってる人ってことで」

 上手く通訳なんざできないので適当に説明したが、カイトさんは首を傾げつつもトムさんを見て何か分かったんだろう。
 一歩踏み出して、ぽかんとしてたトムさんに右手を差し出した。

「―――…、カイト、だ。よろしく」
「へ? あ、ああ。どうも」

 戸惑いつつも軽く握手を交わした二人に、少し満足した。
 あの時は、結局トムさんは別の仕事に借り出されてカイトさんと満足に話すこともなかったから、ちゃんと知り合うこともなかった。
 トムさんには学生時代にも目をかけてもらって、今じゃ仕事を紹介してもらって面倒までみてもらってる。
 カイトさんにはこの前の恩があるし、あれから話してるうちに凄い人だっていうのが分かったので、この二人をこうして紹介できたっていうのが何だかスゲェ気がしたからだ。

「そういやカイトさん、飯はまだっすか?」
「メシ…食事、か?」
「っす。ちょうどトムさんと寿司食べに行こうって話してたんで、よかったら一緒にどうッスか?」

 俺がわざわざ誘いをかけたのが意外だったんだろう。
 トムさんが驚いてるのが分かったので、ちょっと声を潜めて言ってみる。

「すんません、急に。この前世話になったんで、できれば一緒にどうかと思って。もちろん、金は俺が払いますから」
「いや…俺は別に構わねぇよ。むしろ、俺も一緒でいいのか?」
「っす。むしろ、トムさんにも相談したかったんで」
「? なにがだ?」

 怪訝そうに首を傾げたトムさんに事情を説明しようと思ったが、さっき俺が言ったことを吟味していたカイトさんが顔を上げたので向き合うと、カイトさんはこくりと頷いて言った。

「寿司は、食べたコトがある。生魚、怖いが、ハシ使えるぞ」
「へえ、そうなんすか」

 箸を使えるってのはスゲェな。外国じゃフォークとナイフばっかだろうに。
 しかし寿司を食ったことがあるなら、他の日本食のがいいんだろうか? そう思って尋ねてみれば、

「寿司以外にも、天ぷら、すき焼き、トウフ、味噌汁、…たこ焼き? 色々食べたこと、あるぞ」
「そりゃスゴイ。アンタ、日本食好きなのか?」

 感心したようにトムさんが言えば、カイトさんは不思議なことに首を振った。

「親友、が好きなんだ。ジャポン食」
「あー、アレか? 日本かぶれっつーやつか。まあ、日本食って海外じゃ受けがいいみたいだからなぁ」
「みたいっすね。でも、そんなに日本食に通じてる外国人っつーのも、珍しいっすね」

 ああでも、サイモンとこの大将も、ロシア人なのに日本の職人みたいに握るからそうでもないのか。
 そう思っていると、カイトさんはなぜか苦笑いを浮かべた。

「アイツは、ジャポン食の店、作ってた。寿司、酒、しょうゆ、人気になったのは、アイツの店のせいだ」
「は…? アンタの親友は、社長か何かか?」
「社長…オーナー? だな」

 首をひねりつつもそう語るカイトさんに、俺もトムさんも驚きを隠せない。
 カイトさんの親友については前にも聞いてたが、年齢的にもカイトさんとさほど変わらないって話だから俺よりいくつか上だろう。
 なのにいくつも店舗を経営してるっつーんだから、なんつーか次元が違う人なのか。頭がいいとは言ってたが、まさかそこまでとは思わなかった。

「そいつはなんつーか、スゲェ人なんだな。…あー、んじゃ露西亜寿司みたいな店じゃマズイか?」

 心配そうにぼやいたトムさんの言葉に、ハッとする。
 言われてみればそういう人と親しいカイトさんのことを考えると、寿司も露西亜寿司みたいな見た目の怪しい店っつーのはマズイかもしれない。
 味も値段も銀座みたいなトコにある一級品ってほどじゃないから俺たちにはいいが、舌の肥えた人にはちょっと嫌がられるかもしれねぇな。
 そう思って今更ながら焦り始めると、カイトさんは首を傾げつつ言った。

「何か心配か? 俺は、回転寿司でも問題ない」
「…回転寿司、行ったことあるんすか?」
「ああ」

 頷くカイトさんに少しホッとした。
 けど、そう言われれば逆になんでそんな店行ったんだ?と思わずにはいられない。
 そう思ったのが顔に出てたんだろう。カイトさんは、ふつりと余裕のある顔で笑って言った。

「シズオ。俺は、何でもいい。――分かるだろう?」
「…っす」

 食べれるなら味は気にしない。そう前と語ったカイトさんを思い出して、少し言葉に詰まる。
 あまり深い事情は知らないけど、カイトさんの表情からして気を悪くした様子はない。深い目線に頷けば、カイトさんは俺の頭に手をのせて宥めるように言った。

「大丈夫だ。心配するな」
「――…っす」

 子供を慰めるような動作に微妙な心境になってぽそりと返せば、トムさんの「アンタ…すげぇな…」という小さな呟きが聞こえた。
 俺にとったら、アンタも十分すごい男っすよ。


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▼以下補足。
・静雄のカイトさん呼び、違和感パネェwww
・でも呼び捨ても変なので妥協。
・トムさんとカイトが初回で顔合わせてたのすっかり忘れて書いてた藍沢は、一回静雄にディスられるべき。
・静雄がトムさんに相談したかったのは、パスポート紛失した外国人ができる仕事(荒事もOK)を紹介したかったから。
・この後、露西亜寿司で静雄の親切心が発揮され、トムさんによるカイトの事情聴取。多大な誤解を招きます(笑)。
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