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Drrr8巻まで読破しました。

おいちゃんイイよおいちゃんwww
でも主人公と絡めると、大変物騒なことにしかならない気がするよ。
独尊丸についてのデータが不足しているため、この前ちょろっと書いたネタで書き下ろそうか検討中。
ニーニー鳴いて欲しい。つーか、おっぱいon子猫とか杏里ちゃんマジ高校生?魔乳なの?


以下、本文。



*******************************************


 カチャリとローテーブルに置いた陶器の擦れる音がしたことに、少しばかりドキリとした。
 緊張から震えたわけではないが、思いがけない来客に戸惑いが隠せなかったのだろう。それほど不自然な動作はしていないが、ゆっくりとソーサーを相手の目前に差し出して姿勢を正したところで、一声かけられた。

「Thank you」

 きれいな笑顔で微笑まれたことに視線で頷いたものの、用意したコーヒーに手をつける様子のない男に胸には不安がよぎる。

(なんだってこんな時に早く帰ってこないのかしら、アイツは)

 いつもは事務所のデスクの前からほとんど離れないのに、どうしてこんな時に限って外出したまま戻らないのか。
 ふらっと出かけて戻らないことは度々あったが、来客があるならそう言ってくれなければ、こちらとて戸惑うというものだ。
 そもそもこの事務所には接客用のティーセットの一つもないのだ。だから仕方なく、自分用に用意しておいたティーセットにインスタントコーヒーを入れて何とか間を持たせるしかなかった。
 紅茶用のティーカップなので、浅く広い口のカップではコーヒーの味はますます安っぽいものになってしまうだろう。せめて茶葉が切れていなければ、とほぞを噛む思いで一転を睨んでいると不意に男が声をかけてきた。

「そう気にしないでいいですよ。アポはとってないから、気長に待たせてもらうので」
「………そう、ですか」

 流暢な日本語に面食らう。
 日本人離れした顔つきであったし、対面した時に何を言われたのか分からず、日本語が話せないのだと思っていた。
 ややたどたどしい英語で会話を成立させたのも一因であったし、突然の来訪者に驚いたのも影響していたのは間違いない。

(…どういうこと? 謀っているにしては、それらしい感じはしないけど)

 ソファに腰掛けた男は緊張している様子もなく、部屋の中を探っている素振りもない。
 しかし、今の話しぶりだとわざと日本語を話さなかったように思える。
 もしや厄介な相手を部屋の中に招いてしまったのか。と、眉根を寄せて男を見ていると、カチャリと部屋のドアノブが音をたてた。

「―――波江さんが男を連れ込んでるとは、天変地異の前ぶりかな? 誠二君に教えてあげたいね」
「仕事の依頼人だそうよ」

 誠二の名を出したのは嫌味だろう。
 確かに許可なくこの男を事務所に入れたのは軽率だったかもしれないが、依頼人にしか持ちえない証拠品(報告書)を持参されて断るには、状況が悪かったのだ。
 その原因は間違いなくこの雇い主であるので、その落ち度を咎められるのは不愉快だった。

「この前、日経BPに載ってた『PIIGES』のコラムの件での依頼主だそうよ」
「ああ…ギリシャ危機の」

 ふぅん、と納得した様子の折原臨也の目の色が、チラリと好奇心を覗かせる。
 何を考えているか相変わらず分からない笑みを浮かべてはいるが、依頼主が直接足を運んだことに興味を持ったらしいことは分かった。
 折原は人好きのする笑みを見せ、ソファから立ち上がっていた相手に近づき手を差し出した。

「お待たせしたみたいで申し訳ありません。折原臨也です」
「マクベスです。スミマセン、突然お訪ねして」
「いえ。それで早速ですが…、わざわざご足労いただいた用件をお伺いしても?」

 軽く握手を交わしソファへ座った折原に、マクベスと名乗った男はやはりすらすらとした日本語で喋った。
 どうやら更なる仕事の依頼らしい会話に、その場から少し離れて気づかれないように息をついた。

(……気づいてないと思うけど、タイミングがマズかったわね)

 ちょうど戸棚にしまってあったファイルを整理していた時にあの男が訪ねてきたのだが、部屋に通した時にマズイものが戸棚の奥から見え隠れしていたのだ。
 いつもはファイルの後ろに隠れていて目につかないのだが、ちょうど依頼のあった資料をファイリングするために動かしたせいで、出入り口から容器が半分ほど見えるようになってしまっていた。
 一応、コーヒーを用意する時にさりげなく移動させておいたが、不審に思われていたら厄介だ。

 チラリと二階のロフトから視線を投げれば、二人は穏やかな様子で会話をしている。

 折原も依頼人相手だからか、あの人を不愉快にさせるような物言いを潜めていた。
 粟楠会の四木を相手どるようなビジネストークに徹しているからか、終始好青年を思わせる笑みを浮かべよどみなく話している。折原の本性を知る人間からしたら、あまりの殊勝ぶりに嫌悪感を抱くほどだ。
 もっとも、彼にとってはそれすら演技の一つであるし、相手の心象など計算のウチに入ってはいるだろうから、あれこれ考えるだけ無駄なのだろうが。

「波江さん」

 不意に折原に声をかけられロフトの手すりに近づき顔を見せれば、折原は資料とコーヒーの追加を強請った。
 揃いのティーカップがないことに気づいているだろうに、わざわざコーヒーを要求した折原に抗議の視線を向けたが、折原は全く意に介さずニッコリと形容詞がつきそうな笑顔を返すばかり。
 内心で盛大な舌打ちをしつつ、依頼人の男が求めた情報源となった資料をテーブルに差し出せば、折原ではなく依頼人の男が「ありがとう」と返した。
 何となくそのことに居心地の悪さを感じて視線を逸らすと、折原が口元を面白がるように吊り上げるのが視界に入り不愉快だった。

 面白いものを見た。とでも言いたそうな反応だったことが癪に障ったが、自分でもなぜそこまであの男を苦手とするのか分からなかった。

 胸にもやもやとした何かが澱むことが嫌で、関わり合いになるべきではないと結論づけ、折原が普段から使っていたマグカップにコーヒーを入れてさっさと出して奥へと引っ込もうとした。
 すると、まるでそのタイミングを計るように男は話を済ませ立ち上がる。
 もう少し相手の情報収集をしたいのであろう折原は引き止めたが、男は予定があるのでとやんわり断りを入れた。

「おや、それは残念です。せっかく足を運んで下さったのに、大したもてなしもできず申し訳ありませんね。お詫びに今回の料金は、サービスさせていただきますよ」
「それはありがとうございます。私も、場所が許すなら今少しお話ししたかったですよ」

 時間が許す、ではなく場所と言った男に疑問が浮かんだ。
 折原も同じだったんだろう。怪訝そうにわざとらしく首を傾げたところで、男は小さく笑ったようだった。

「情報屋の拠点にしては、少々セキュリティが甘いのでは? ――ああ、彼女のことでないですよ。ここには色々と物騒な物がおありのようですから、私としてはいささか心もとなかっただけなので」

 男の発言に緊張が走る。
 やはり、首に気づかれたのか。険しい顔をしていると、咎めるような折原の視線を感じる。そのことで、男が興味深そうにこちらを観察しているのが分かりますます嫌悪感は募った。
 嫌な男だ。と睨みつけると、男はくつりと咽喉で笑ってトントンと指先で部屋の一点を指した。

(なに?)

 意味が分からず眉間に皺を寄せれば、男は声に出さず口だけを動かした。
 読唇術など心得ていないが、男がゆっくりと口を動かしたのでそれは私にも十分分かる動きだった。

 曰く――、『と・う・ちょ・う・き』

「では、また」

 ぎょっとしている間に、マクベスは一声かけてその場から姿を消す。
 実にあっさりとした退出に唖然としたが、『盗聴器』を指摘されてうかつにそれに対し反応するわけにもいかず、行動が遅れたのは間違いなかった。
 勿論それは男の近くにいた折原も同じで。

「…波江さん。後で話聞かせてもらうけど、まず先に掃除してもらえるかな?」
「構わないけど、私だけじゃできないわよ」

 道具なしで盗聴器を見つけられるほど知識や技能があるわけじゃない。
 そもそも、そんなこと普通気づかない。そう、普通なら。

「――なかなか、興味深いお客だね」

 呟くような小さな声にチラリと横目見れば、折原の顔には予想通り隠しようもない好奇が赤みの強い目に浮かんでいた。


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▼以下補足。
・主人公は、自分の見た目が外人なのを知っているため、わざと英語で話していました。
・臨也の事務所の構造がイマイチ不明。アニメ参考にしたけど。ロフトっていっていいのか?あの間取り。
・波江さん勝手に紅茶好き(初心者)にしてみた。
・主人公は、円で事務所内を探りました。詳細は次回。
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